以前のエントリーでも紹介したが、この4月セプテーニホールディングスさんとアライドアーキテクツで株式会社バズマーケティングという合弁会社を設立した。
今日はこの一連の流れから実際自分で感じたジョイントベンチャー(JV)というもの考えてみたい。
①既存事業の存在
今回のJVはJVの主力事業になりうる事業が既に業務提携という形で実際に両社の売上になっていたことが一つの特徴。
「さあ、何しましょうか?」というスタートでは無く、理想論を掲げつつも具体的な話も走っていたことは良かったと思う。事実バズマーケティング社は5月1日営業開始だが5月は受注予算、売上予算ともに持っており、見事クリアしている。
②1+1=2以上
また、当然なのだろうが、両社の強みが完全に違っているところも大事。
アライドアーキテクツのAという色の強みが1、セプテーニホールディングスさんのBという色の強みが1、Cというマーケットに対し1+1=2以上になるかどうかがポイントで強みが分散していると2以上になりやすいのではないかと感じる。強みの色がかぶっていると、親会社の既存事業との競合が気になり、現場も親会社側もはっきりしたメッセージを出しにくくなったりする。
③株式シェアを落としてスケールを取る
更に、株式シェアを落としてスケールを取るという発想も大事。
アライドアーキテクツが同マーケットを単独(=株式100%のシェアで取りに行ったときに取れるシェアが10、JVで同50%のシェアで取りに行ったときに取れるシェアが30とすると掛け算すると10対15で後者の勝ち。という考え。
④マーケットの成長スピードに対するアプローチ
競合他社のいる話なので当然スピードも尺度に入ってくる。JVを作ることによって単独で事業を行うよりどれくらいスピードが上がるかの算段も大事。
JVの話が浮上した早期の社内の論点は②と④に終始する。それがどうやら単独で行うよりもJVでやった方が○という話になると③の話になる。
その際は両社の持っている資産やその事業に対する思い、支払う対価を見せ合いながら③のシェアが決定していく。
②④の話をする際の注意点としては、「やっぱりこの事業単独でやった方がいいじゃん。」と何度も問いかけることだと感じた。
そこでJVが消えてしまうのであればそれで良い。この言葉のフィルタリングを通過してくるJVこそやる価値があるのではないかと思う。
③の話の注意点は一般的な交渉術に譲るが、互いを正確に知ることと本音のところを出せることがとても大事だと思う。
また、②④の段階や③の段階で先方の経営陣とゴルフに2回、会食が1回、会議室での打ち合わせが数回行われた。
ゴルフが多いところが僕らしい。
上記はあくまでも今回の具体的ケースで体験から基づく考えを列挙したに過ぎないのであくまで一例と捕らえて頂きたい。
実は上記の次に非常に大事なステップがある。
それは人。
両社から出てくる役員の相性、コミットメント、共同でのビジョン・目標設定のお膳立ては大事。現場の役員たちの具体的な会話からネガティブな要素が出てきたらしっかり聞き新たにやるかやらないかのところまで話を戻す。
実際、最終段階で振り出しに戻るところまで話は戻っている。
最後に自分が住友商事時代に体験したことを付け加えておこう。
それはJVの役員陣はJVの成功、JVの社員を見ながら仕事をするということ。
社長が親会社を向いて仕事をしているのは社員にはすぐばれるし、社員が最もなえる瞬間。
親会社側も競争力の無い商品をJVに強引に買わせるような取引を行っていると両社ともに競争力を失っていく。
住友商事の優良子会社でスーパーマーケットのサミットの荒井社長が「住商の提供する商品が他社と同じ条件であれば優先して仕入れるが、そうでなければ買わない。」とおっしゃっていたのが懐かしい。
言うは易しで子会社の社長に対する親会社のプレッシャーは強い。
親会社側もその辺を理解して、JVの役員陣に対したいものである。
長くなったが、今週の月曜日にJV設立後初めて両社で会食をセプテーニさん主導で開いて頂いた。
設立前はゴルフをやっても会食してもどこかで交渉ごとが存在しているのに対し、始まってしまえば同じ船。
つまらない交渉ごとを終え、帆を高く上げ目的地に向かって船が進み行くときに行われる宴はなんとも楽しく、ワクワクする。
自分はつくづく事業が好きだなぁと思う瞬間でもあった。
さあ、船は浮かんだ。目的地に向かって全速前進だ。
P.S.:本件の最大の誇りはきっかけ作りから目的地の共有までほとんどをバズマーケティング社の社長になった当社の瀧口と副社長になったセプテーニホールディングスの東さんによって行われた。
このようなボトムアップの案件をフォローして形にすることは、トップダウンの案件の何十倍も嬉しいものなのだなぁとも感じた。二人には今後大いに期待しているし、他のアライドのメンバーもどんどん案件を持ってきて欲しい。
P.S.2:JVのマネジメントは非常に難しいと良く聞く。まだJVというものをかじっただけに過ぎない当社に対し、今後気をつけるアドバイス等あれば諸先輩方から是非頂けるとありがたいです。
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